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レッスン 5 / 8|9分で読めます

ナレッジを育てる

一回限りの使用から、積み上がる組織へ。ナレッジを育てる仕組みを作り、エージェントが育っていく感覚を身につける。

第5回 ナレッジを育てる

積み上がっていくブロックのイラスト。下から上に向かって、ファイル・CLAUDE.md・エージェント・クリニック全体が積み重なるティールとオフホワイトのクリーンな図

このレッスンが終わる頃には、こうなります。

  • ナレッジを「育てる」とはどういうことか、具体的にイメージできる
  • CLAUDE.mdを定期的に更新する習慣の作り方を知っている
  • 「溜まっていく」体感が生まれる仕組みを自分のクリニックで設計できる

「使うほど育つ」

これが、一回使い捨ての指示と、継続運用のエージェントを分ける言葉です。

ChatGPTに質問して、答えをもらって終わり。 これは一回限りの使い捨てです。 次に同じ質問をしたとき、また同じ量の説明が必要になります。

CLAUDE.mdと組み合わせたエージェントは、違います。 使うたびに、少しずつ賢くなります。 というより、院長が少しずつ「教え上手」になっていきます。

「育てる」とはどういうことか

エージェントは、自分で学習しません。 CLAUDE.mdに書かれた情報を読んで動くだけです。

「育てる」というのは、CLAUDE.mdを更新することです。

使ってみて、「この出力は惜しい」と感じたとき。 その感想をCLAUDE.mdに書き加える。

## 調べもの出力のルール(2026-05追加)

- 論文の要約は「背景・方法・結果・結論」の4段で構造化する
- 国内ガイドラインと海外ガイドラインの違いがある場合は、必ず両方記載する
- 「個人差があります」「専門家に相談してください」等の免責は末尾1行だけ

これを積み重ねることが、「育てる」です。

医療現場ではこう翻訳する

「ナレッジを育てる=外来で得た学びをカルテコメントに残す習慣」

外来で難しいケースに当たったとき、優れた医師は何をするか。 対応した後、カルテに「考え方のメモ」を残します。 次に似たケースが来たとき、そのメモが頭の中ではなくカルテに在る。

エージェントへのナレッジ蓄積も、同じ構造です。

「この指示では足りなかった」という体験を、CLAUDE.mdに残す。 次に同じ依頼をするとき、同じ失敗をしなくて済む。

ただし、医師は自分の脳に蓄積します。 エージェントへの蓄積は、ファイルに残します。 ここが根本的に違う点です。 ファイルに残れば、退職もしないし、記憶を失うこともない。

ナレッジを育てる:3つの実践

実践1:「改善メモ」を使った後に1行追加する

エージェントを使い終わった後、30秒だけ時間を取ります。

「今日の出力で、惜しかった点はあるか」

あれば、CLAUDE.mdの末尾に1行追加します。

## 改善ログ

2026-05-10:リサーチ担当の出力に、論文の発表年が入っていなかった。今後は必ず発表年を含めること
2026-05-17:記録担当のレポートが長すぎた。月次レポートは500字以内を上限にする
2026-05-24:秘書への朝の依頼が毎回同じ文章になっている。定型化してよりシンプルな指示に変える

この改善ログが、CLAUDE.mdの最も生きた部分になります。

実践2:成功パターンを「テンプレート」に昇格させる

「この指示で、期待通りのものが返ってきた」という体験も記録します。

## 成功した指示パターン

### ガイドライン比較(成功)
2026-05-20成功。
「〇〇ガイドライン202X年版と201X年版の変更点を、以下の形式でまとめてください:
1. 対象患者の変更 2. 薬剤推奨の変更 3. 診断基準の変更」
→ この構造を指定すると、読みやすい比較が出てくる。

成功パターンは、次回そのまま使えます。 指示を書く時間が、どんどん短くなります。

実践3:フォルダ構成でナレッジを管理する

CLAUDE.mdだけでは管理しきれなくなったとき、フォルダで整理します。

クリニック_AI運用/
├── CLAUDE.md                    ← 全体の設定ファイル
├── 01_秘書/
│   ├── role.md                  ← 秘書の役割定義
│   └── templates/               ← 成功した指示のテンプレート集
├── 02_リサーチ/
│   ├── role.md
│   └── research-log/            ← 過去の調査結果アーカイブ
├── 03_記録/
│   ├── role.md
│   └── monthly-reports/         ← 月次レポートの蓄積
└── 04_制作/
    ├── role.md
    └── slides/                  ← 過去スライドのアーカイブ

このフォルダに、Claude Codeがアクセスします。 「先月のレポートを参考に今月のレポートを作って」という指示に、ちゃんと対応できる。

「育てる」ための習慣:週1回の更新タイム

ナレッジは、使った直後に追加するのが理想です。 でも、それが難しい週もあります。

そこで、週1回だけの更新タイムを作ることをおすすめします。

金曜の夜でも、月曜の朝でも構いません。 15分取って、その週のエージェントとのやり取りを振り返る。 「惜しかった点」と「うまくいった点」を1〜2行ずつCLAUDE.mdに追加する。

これだけです。

いつ更新しないか

全てのやり取りをCLAUDE.mdに追加する必要はありません。

更新しなくていいケース:

  • 一回限りの特殊な依頼(次も同じことをする可能性が低い)
  • 出力のクオリティに満足した場合(現状のCLAUDE.mdで十分)
  • すでに似たルールが書いてある場合(重複しない)

更新すべきケース:

  • 「次も同じ指示をするな」と感じたパターン
  • 「毎回同じ説明を付け加えている」と気づいたとき
  • 「この種類の依頼は、構造化した方がいい」と感じたとき

次回予告

第6回は、業務の言語化です。

ナレッジを育てるためには、まず業務を言語化できなければなりません。 「なんとなくやっている」仕事を、AIに渡せる形にする方法を学びます。


「使うほど育つ」は、自動では起きません。 院長が少しずつ書き加えることで、育ちます。

それは手間に見えますが、実は自分の仕事を整理する時間でもあります。 ナレッジを育てることで、院長自身のやり方も、少しずつ整理されていきます。