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個人情報保護 PHI/PIIの絶対線

医療現場でAIを使う際の個人情報管理。PHIとPIIの定義、絶対NG項目の具体リスト、仮名化・匿名化の実務設計。

  • レッスン 3 / 8
  • 15分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • PHIとPIIの違いを識別子と診療情報の組み合わせの観点で説明できる
  • 患者氏名やカルテ番号など外部AIに入力してはならない情報を具体的に挙げられる
  • 仮名化と匿名化の違いを個人情報保護法上の扱いの差として使い分けられる

個人情報保護 PHI/PIIの絶対線

このレッスンが終わる頃には、

  • PHIとPIIの違いを説明できるようになる
  • 外部AIサービスに入力してはならない情報を具体的に挙げられるようになる
  • 仮名化・匿名化の実務上の違いを理解できるようになる

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最初に言い切る

外部AIサービス(ChatGPT・Claude・Gemini等)に、患者の個人を識別できる情報を入力してはなりません。「なるべく控える」ではなく、原則禁止です。

外部AIサービスは入力データを品質改善等に利用する場合があり(利用規約・設定による)、外部サーバーに送られた時点で制御する手段は失われます。業務の効率化より、患者の情報保護が先です。

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PHIとPIIの違い

医療の世界では、PHIとPIIという2つの用語を使います。

PIIとPHIの違い

PII 個人識別情報

特定の個人を識別できる情報全般。日本の個人情報保護法が対象とする「個人情報」とほぼ重なる。

氏名、生年月日、住所・電話番号・メールアドレス、マイナンバー・パスポート番号、IPアドレス(条件による)、顔写真・指紋など生体情報

PHI 保護対象保健情報

PIIのうち、医療・健康情報と紐づいたもの。米国のHIPAA(医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律)が規定した概念だが、日本の医療現場でも同じ考え方で整理できる。

診断名・病名、処方薬・投薬歴、検査結果・画像所見、受診歴・入院歴、保険情報、治療方針・手術記録

これらが患者の氏名や識別番号と結びついた状態で存在するとき、PHIになります。

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絶対NG:外部AIに入力してはならない情報

以下は、状況を問わず外部AIサービスへの入力を禁止します。

外部AIに入力してはならない情報

1

識別子(患者を特定できるもの)

患者氏名(フルネームはもちろん、名字だけでも他の情報と組み合わせると識別可能)、患者ID・カルテ番号、生年月日、住所・郵便番号・電話番号・メールアドレス、保険証番号・マイナンバー、顔写真・X線など患者の識別に使える画像

2

診療情報(識別子と切り離せない形で存在するもの)

上記識別子と組み合わされた診断名・検査値・処方内容、手術記録・入院サマリ・退院時要約(氏名や日付が含まれる形式)、特定患者に関するオーダー内容・ケアプラン

3

職員情報

職員の氏名・連絡先、評価・査定内容、給与情報

4

院内機密

未公開の経営数値、取引先との契約内容、訴訟・クレーム関連文書

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仮名化と匿名化:どう違うか

「個人情報を除けばいい」という理解は、正確ではありません。仮名化と匿名化は別物です。

仮名化と匿名化はどう違うか

匿名化(anonymization)

元の情報と照合しても個人を識別できない状態にすること。一度匿名化すれば個人情報保護法の規制対象から外れる。

ただし本当の匿名化は難しい。稀な疾患・地域・日時・属性が重なると再識別が可能になる場合がある。

仮名化(pseudonymization)

氏名・IDなどの識別子を別の記号(仮名)に置き換えること。対応表があれば元の個人を識別できるため、引き続き個人情報として扱う必要がある。

医療現場でよくある「患者さんのイニシャルで書けばいいですよね」は仮名化です。匿名化ではありません。

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AIに渡せる情報:実務的な判断チャート

渡そうとしている情報に、患者を特定できる要素が含まれているか?
    ↓
    YES → 外部AIに渡さない。院内システムで完結させる。
    ↓
    NO  → その情報だけで患者を特定できないか?
            ↓
            可能性あり(希少疾患・稀なデータの組み合わせ等)→ 渡さない
            ↓
            ほぼ不可能 → 渡す前に情報セキュリティ担当に確認する(初回のみ)

一般論として、「架空のデータ・ダミーデータで試す」「公開されている統計情報を使う」「匿名症例報告(学会や雑誌で公開済みのもの)を参照する」は安全です。

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「正しい使い方」の例:外来で実際に使えるシーン

外来で実際に使えるシーン

使える

「抗生剤アレルギーのある患者への代替薬を考えたい。βラクタム系アレルギーの場合、下気道感染に使える代替薬の選択肢を教えて」(患者情報なし、疾患概念の質問)

「以下の英語論文の要約を日本語で作って」(公開論文)

「外来で保護者に渡すアトピー説明文書を作って。患者名の入れる場所は空欄にして」(個人情報なし、汎用テンプレート)

「以下の症例は教科書的にどう考えるか」(架空症例、学習目的)

使えない

「田中◯◯さん、8歳、体重23kg。今朝から発熱あり。先週RSウイルスの診断を受けていて、現在の対応は…」(患者識別情報+診療情報の組み合わせ)

「カルテ番号12345の患者の検査値は…」(識別情報付き診療情報)

「添付のX線画像を見て所見を述べて」(患者の医療画像)

患者を特定できる情報が入っているかどうかが境界線です。

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組織として守る仕組み

個人の意識に頼るだけでは、事故はなくせません。組織として最低限整えるべき3点です。

1. チェックリストの配布:入力前に自問するための1枚。第2回のポリシーの「入力禁止情報リスト」をポスターや電子掲示板に掲示する。

2. インシデント報告フローの明確化:「送ってしまったかもしれない」と気づいた時の報告先を事前に決め、ヒヤリハット報告の一種として扱いハードルを下げる。

3. 定期的なリマインダー:ポリシーは作った時が最も読まれる。3ヶ月後・半年後に送る仕組みを設計する。

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参考

  • 個人情報保護委員会「医療関連分野における個人情報の取扱い」
  • 厚生労働省「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン 第7.0版」
  • HIPAA(Health Insurance Portability and Accountability Act)Privacy Rule(概念参照として)
  • 日本医師会「AI活用に際しての医師の倫理ガイドライン」(各学会ガイドラインと合わせて参照のこと)

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