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統計学の基礎:記述統計とデータの種類

統計学の基本概念、記述統計と推測統計の違い、データの種類、基本統計量、分布について学びます

  • レッスン 1 / 8
  • 11分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 量的データと質的データ(名義尺度・順序尺度)を見分けられる
  • 右に歪んだ分布では中央値が平均値より適切な理由を説明できる
  • 標準偏差と標準誤差の違いを区別しエラーバーの意味を正しく読める

統計学とは何か

統計学とは、データを収集、整理、分析、解釈するための学問です。医療においては研究データの分析から診断精度の評価、治療効果の判定、疫学調査まで、あらゆる場面で統計が使われています。

医療における統計の4つの役割

1

研究データの分析

臨床試験の結果を数値で評価する

2

診断の精度評価

検査の感度・特異度を定量化する

3

治療効果の評価

新薬や新治療法の有効性を検証する

4

疫学研究

疾患の発生率やリスク因子を明らかにする

記述統計と推測統計

統計学は大きく2つの領域に分かれます。

記述統計と推測統計

記述統計

データの特徴を要約・記述する手法です。平均値、中央値、最頻値、標準偏差、分散の計算やグラフ・表での可視化が含まれます。

目的は「手元のデータを正確に把握する」ことです。

推測統計

サンプル(標本)から母集団全体について推測する手法です。仮説検定、信頼区間、回帰分析などが含まれます。

目的は「限られたデータから全体像を推し量る」ことです。

視点

論文では記述統計→推測統計の順で使う

臨床研究の論文では、まず記述統計で対象者の特性を示し(Table 1)、次に推測統計で仮説を検証する、という構成が一般的です。


データの種類

医療データを適切に分析するには、扱うデータの種類を正しく見分けることが出発点になります。

量的データと質的データ

量的データ

数値で測定でき、四則演算が意味を持つデータです。平均値や標準偏差を計算できます。

年齢、体重、身長、収縮期血圧、HbA1c、体温、eGFR、CRPなど。

質的データ

カテゴリに分類されるデータです。

名義尺度は順序がないカテゴリ(性別、血液型、診断名)、順序尺度は順序があるカテゴリ(重症度スケール、TNM分類のステージ、痛みのNRS)です。

どちらに当たるかで、使える統計手法が変わる

視点

データの種類が統計手法を決める

「どの統計手法を使うか」は、データの種類で大きく変わります。量的データにはt検定や相関分析、質的データにはカイ二乗検定やFisherの正確検定を使います。論文を読む際にも「このデータの種類に対して適切な手法が使われているか」を確認する習慣をつけましょう。


基本統計量

中心傾向の指標

データの「中心はどこか」を示す指標です。

平均値(Mean) はすべての値の合計を個数で割った値です。最も直感的な指標ですが、外れ値の影響を受けやすいという弱点があります。たとえば、10人の入院日数が 3, 4, 4, 5, 5, 5, 6, 6, 7, 50 の場合、平均は9.5日になりますが、中央値は5日です。外れ値1つで実態とかけ離れた値になります。

中央値(Median)はデータを小さい順に並べたとき中央に位置する値です。外れ値に対してロバスト(頑健)な指標であり、入院日数や医療費など右に裾が長い分布で特に有用です。

最頻値(Mode)は最も頻繁に出現する値です。カテゴリカルデータの代表値として使われます。

ばらつきの指標

データの「散らばり具合」を示す指標です。

標準偏差(Standard Deviation: SD) はデータが平均からどの程度散らばっているかを示します。値が小さいほどデータが平均付近に集中し、大きいほど散らばっています。

分散(Variance)は標準偏差の2乗です。数学的な計算では分散を使うことが多いですが、解釈のしやすさでは標準偏差が優れています(単位がデータと同じため)。

注意

SD(標準偏差)とSE(標準誤差)を混同しない

論文でよく見る「SD」と「SE(Standard Error)」は別物です。SDはデータのばらつきを表し、SEは推定値の精度を表します。SEはSD÷√nで計算されるため、サンプルサイズが大きくなるほど小さくなります。グラフのエラーバーがSDなのかSEなのかで、見た目の印象が大きく変わるので注意してください。


分布

正規分布

統計学で最も重要な分布の一つです。左右対称の釣鐘型(ベルカーブ)をしており、平均と標準偏差の2つのパラメータで完全に特徴づけられます。多くの統計手法は正規分布を前提としているため、正規分布かどうかの確認(正規性の検定)は分析の第一歩になります。

医療での例として、健常者集団の身長・体重の分布、多くの検査値の基準範囲(平均±2SD)などがあります。

その他の重要な分布

1

二項分布

成功か失敗かの2つの結果がある試行を繰り返す場合。治療の奏効・非奏効、合併症の有無など

2

ポアソン分布

まれな事象の発生回数を扱う。副作用の発生件数、感染症のアウトブレイク、救急搬送数など


医療研究での統計の役割

統計はデータ分析の段階だけでなく、研究デザインの時点から関与します。設計が甘いと、どれだけ丁寧にデータを集めても結論が出せなくなります。

01

研究デザイン段階

サンプルサイズの計算、対照群の設定、ランダム化の方法を決定する

02

データ分析段階

記述統計で対象者の特性を要約し、推測統計で仮説を検証する

03

結果の報告段階

使用した統計手法、p値、信頼区間、効果量を正確に報告する(CONSORT声明・STROBE声明など)

統計が関わる3つの研究段階

参考文献

セルフチェック

1. 入院日数のデータが右に大きく歪んだ分布をしている場合、中心傾向の指標として最も適切なものはどれか?

2. 次のうち質的データ(カテゴリカルデータ)はどれか?

3. 論文のグラフでエラーバーが「SE(標準誤差)」で描かれている場合の注意点として正しいのはどれか?

明日のアクション

手元にある臨床データや公開データセット(例:UCI Machine Learning RepositoryのHeart Diseaseデータセット)を使い、量的データと質的データを分類したうえで、量的データの平均値・中央値・標準偏差を計算してみましょう。ExcelやPython(pandas)で df.describe() を実行するだけでも基本統計量が一覧で得られます。

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