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AIに動画を作らせるという選択肢
レッスン 1 / 6|13分で読めます

AIに動画を作らせるという選択肢

「動画作ってよ」の一言で60秒の解説動画ができる仕組み。Remotionの動作原理、画像生成AI動画との使い分け、費用の実額まで実例で解説する

2026年6月、起業家のけんすうさんが、あるポスト(元ポスト)を投稿しました。

「Claude Fable5に『なんかGoogle I/Oについての動画を作ってよ』と言って指示するだけで作った動画です」

添えられていたのは、60秒のモーショングラフィックス動画。番号付きの見出しが弾み、箇条書きがポンポンと飛び出し、マスコットが画面の端で揺れている。テレビの情報番組で見るような、あの「解説動画」です。

私はこれを見て、その日のうちに同じものを作りました。まず、その完成品を観てください。51秒です。

このコースで作る完成版の実物。長尺の視聴用動画なので、クリックして再生します。

これが、このコースで作り方を学ぶ動画の実物です。ナレーションも効果音も含めて、人間が作った素材はマスコットの画像だけ。残りはすべてAIへの日本語の指示から生まれています。

このコースでは、その一部始終を隠さず教材にします。うまくいった手順だけでなく、「単調だ」と言われて作り直した話も、ビルドが4回死んだ話も、そのまま書きます。


動画生成AIではなく、「コードで動画」

最初に、仕組みの種明かしをします。

けんすうさんの動画も、私の動画も、SoraやVeoのような動画生成AIは使っていません。使ったのは Remotion というツールです。

Remotion: https://www.remotion.dev

Remotionは、Reactというウェブの部品作りの仕組みで、動画を組み立てるツールです。仕組みを少しだけ分解します。

動画は、静止画(フレーム)の連続です。30fpsの60秒動画なら、1,800枚の静止画でできています。

Remotionがやっているのは、突き詰めるとこの3段階です。

  1. 「いま何コマ目か」という数字を、あなたの書いた画面部品に渡す
  2. 部品は「120コマ目ならタイトルは80%の大きさ」のように、コマ番号から見た目を計算して1枚の画面を描く
  3. それを1,800回繰り返して撮影し、つなげてmp4にする

つまり、動画とは「コマ番号を受け取って画面を返す関数」です。

プログラムの言葉に聞こえますが、安心してください。この関数を書くのはAIです。あなたの仕事は「どんな動画か」を日本語で説明することです。

動画ができるまでの4ステップフロー図。日本語で指示、AIがコードを書く、Remotionが1800コマを撮影、mp4が完成、の流れを矢印でつないでいる
全体の流れ。あなたが受け持つのは、いちばん左の吹き出しだけです。

分業はこうなります。

  • あなた:「AMPL learnの紹介動画を作って」と日本語で指示する
  • AI(Claude):動画の構成を考え、Reactのコードを書く
  • Remotion:そのコードを1,800枚の画面として撮影し、mp4に変換する

動画の正体はコードなので、Vibe Codingの応用そのものです。入門編でアプリを作ったのと同じ流れで、出力がアプリではなく動画になっただけです。

生成した解説動画のワンシーン。左に番号付き見出しと箇条書きピル、右にブラウザ風ウィンドウの中の図解、左下に白い猫のマスコット、下部に黒い字幕バーが配置されている
この画面のすべての要素が、AIの書いたコードでできています。

使い分け:動画生成AIとコード動画の境界線

「SoraやVeoのほうがすごい映像が出るのでは」と思うかもしれません。そのとおりです。実写のような映像はコードでは作れません

逆に、解説動画はコード方式の独壇場です。境界線を表にします。

観点動画生成AI(Sora/Veo等)コード動画(Remotion)
画面内の日本語高確率で崩れる絶対に崩れない(フォント描画)
修正再ガチャ。狙った場所以外も変わるその1行だけ直せる
再現性同じ指示でも毎回違う同じコードなら毎回同じ
実物の素材埋め込めないスクショ・図解をそのまま埋め込める
実写的な映像得意不可能
尺の制御不安定1コマ単位で正確

判断基準はシンプルです。「文字と図で説明する動画」ならコード、「映像美で見せる動画」なら生成AI

医療職が作りたい動画の大半(サービス紹介、講座案内、患者説明、学会発表の補助)は前者です。

このうち特に効くのが「修正がピンポイント」です。動画づくりの実際の時間は、初稿よりも修正の往復に消えます。

「3シーン目の見出しだけ変えて」が1行の修正で済むかどうかは、制作時間を倍以上左右します。

実物素材が埋め込めることの意味

3つ目の強み「実物素材」について、もう少しだけ。

下の画像のブラウザ風ウィンドウの中身は、AMPL learnの医用画像AI講座で本当に使われている図解です。動画用に描き直したものではなく、教材のファイルをそのまま参照しています

解説動画のワンシーン。ブラウザ風ウィンドウの中に医用画像AI講座の実物の図解が表示されている
でっち上げのイメージ画像ではなく、実物を見せられるのが信頼につながります。

紹介動画の役割は「中身が本当にあること」を伝えることです。実物のスクショに勝る証拠はありません。生成AIのそれらしいイメージ映像では、この説得力は出せません。

医療の文脈ではもうひとつ意味があります。実物を使うかぎり、動画の中身が誇張にならないことです。盛った映像は作れないし、作る必要もない。誠実さが構造的に担保されます。

かかった時間とお金:実額を公開する

実録なので、正直に書きます。

時間。1本目(48秒・9シーン)は、指示出しと確認を合わせて約90分。内訳はおよそ、指示と構成の相談に20分、スチル確認と修正の往復に50分、レンダリング待ちに20分です。

2本目は型ができていたので20分強でした(種明かしはレッスン6で)。

お金

  • Remotion本体:無料(個人・従業員3名以下の組織。それを超える企業は有償ライセンス。公式のライセンスページで要確認)
  • AI(Claude):普段の契約の範囲内
  • ナレーション音声(ElevenLabs):このコースの2本で数十円相当。無料枠でも収まる量(詳細はレッスン5)
  • 効果音・BGM:0円(無料ツールで自作。これもレッスン5)

外注した場合、この規模のモーショングラフィックス動画は数万円から十数万円、納期は1〜2週間が相場です。

思い立った夜に作って、翌朝には公開できる。金額差より、この速度差のほうが効きます。

Vibe Coding講座紹介動画のタイトル画面。「コードは書けなくても、アプリは作れる。」の文字とマスコット
2本目に作ったVibe Coding講座の紹介動画。型の再利用で20分でした。

このコースの歩き方

全6レッスンの地図を示します。

  1. このレッスン:仕組みと使い分けを知る
  2. 最初の60秒動画:環境づくりから1本目の完成まで
  3. 型の分解:画面を6部品に分けて、修正指示を的確にする
  4. 動きの演出:「単調」を消す7つの処方箋
  5. :効果音・BGM・ナレーション。自分の声を育てる話まで
  6. 量産体制:2本目を20分にする仕組み

レッスン2から4までは無音の動画を磨き、5で音を乗せ、6で量産に入る構成です。順番に進めば、最後にはあなたのサービスの紹介動画が1本できあがる設計にしてあります。

今日のまとめ

3行で振り返ります。

  • けんすう氏の「一言で動画」の正体は、動画生成AIではなくコードで動画を組むRemotion。動画とは「コマ番号から画面を計算する関数」
  • 使い分けの境界線は明確。文字と図で説明する動画はコード、映像美は生成AI
  • 1本目90分・2本目20分・追加費用ほぼゼロ。紹介動画の内製が現実的になった

次のレッスンでは、実際に最初の1本を作ります。あなたが書くのは、やはり日本語だけです。

演習(10分)

手を動かす前の準備運動です。

  1. けんすうさんの元ポストの動画を一度見て、画面に出てくる「部品」を3つ挙げてください(例:番号付きの見出し)
  2. 自分が作るとしたら何の紹介動画にするか、タイトルを1行で書いてください。レッスン2からは、それを題材に進めます

参考・出典