当直AIツールキット:準備から振り返りまで完全ガイド
はじめに
当直は研修医にとって最も緊張する業務の一つです。限られた時間と情報の中で、迅速かつ正確な臨床判断を求められます。特に経験の浅い段階では、「この鑑別で合っているか」「この薬の用量は正しいか」「この検査値の意味は何か」といった不安が常につきまといます。
本ガイドでは、当直の全フェーズ(準備・実践・振り返り)でAIを活用し、安全かつ効率的に業務を遂行する方法を紹介します。
ただし、最初に強調しておきたい重要な原則があります。
AIは当直中の「思考の補助」であり、臨床判断の「代替」ではありません。 最終的な診療判断は必ず自分自身(および指導医)が行ってください。AIの出力は、あくまで考えの整理や知識の確認に使うものです。
このガイドで学べること
- 当直前にAIを使って準備する方法
- 当直中に安全にAIを活用するワークフロー
- 当直明けに学びを最大化する振り返り手法
- 各場面で即座にコピーして使えるプロンプト
- AIに聞いてはいけないこと・やってはいけないこと
対象読者
- 初期研修医(特に当直に不安がある方)
- 後期研修医(当直業務の効率化を図りたい方)
- 当直で「もっと自信を持ちたい」と感じている全ての医師
所要時間
- 通読: 約30分
- 実践: 当直のたびに繰り返し活用
前提知識
- 基本的な臨床知識
- ChatGPT、Claude、Perplexityなどの基本的な使い方
フェーズ1: 当直前の準備(出勤前30分)
なぜ事前準備が重要か
当直中は時間的プレッシャーが大きく、冷静に調べ物をしている余裕がないことが多いです。事前にプロトコルを確認し、頻出疾患の対応手順を頭に入れておくだけで、当直中のパフォーマンスは劇的に向上します。
1-1. よくある救急疾患のプロトコル事前生成
当直の診療科や施設に応じて、よく遭遇する疾患の対応プロトコルをAIに生成させておきましょう。これをスマートフォンのメモアプリやNotionにコピーしておけば、当直中にすぐ参照できます。
プロンプト1: 頻出疾患プロトコル一括生成
あなたは救急医学の指導医です。内科系当直で頻繁に遭遇する以下の疾患について、それぞれ「初期評価」「必要な検査」「初期治療」「コンサルト基準」の4項目で、箇条書きのプロトコルを作成してください。
対象疾患:
1. 急性冠症候群(ACS)
2. 急性心不全
3. 脳卒中(脳梗塞・脳出血)
4. 肺炎(市中肺炎)
5. 急性腎盂腎炎
6. 消化管出血(上部・下部)
7. アナフィラキシー
8. 低血糖
9. 発熱性好中球減少症(FN)
10. せん妄
各疾患について以下の形式で出力してください:
【疾患名】
- 初期評価(ABCDEアプローチに準拠):
- 必要な検査(血液検査、画像検査):
- 初期治療(具体的な薬剤名と用量を含む):
- 上級医コンサルト基準:
このプロンプトで生成された内容をプリントアウトするか、スマートフォンに保存しておきます。
1-2. 薬剤の用量早見表の作成
当直中に最も迷うのが薬剤の用量です。特に体重換算が必要な薬剤や、腎機能に応じた調整が必要な薬剤は事前に整理しておくと安心です。
プロンプト2: 当直頻用薬の用量早見表
あなたは救急薬理学の専門家です。当直中に頻繁に使用する以下の薬剤について、用量早見表を作成してください。
対象薬剤:
- アドレナリン(エピネフリン): アナフィラキシー用、心停止用
- ニトログリセリン: 急性冠症候群、急性心不全
- フロセミド(ラシックス): 急性心不全
- アセトアミノフェン(カロナール): 解熱鎮痛
- セフトリアキソン(ロセフィン): 肺炎、尿路感染
- メロペネム: 重症感染症
- ヘパリン: DVT/PE
- ブドウ糖(50%ブドウ糖液): 低血糖
- ハロペリドール: せん妄
- オンダンセトロン(ゾフラン): 制吐
各薬剤について以下を含めてください:
- 標準用量(成人)
- 腎機能低下時の調整(該当する場合)
- 投与経路と投与速度
- 主な禁忌・注意事項
- 表形式で出力
1-3. 当直特有の状況への備え
プロンプト3: 電話対応テンプレート生成
あなたは研修医の指導医です。当直中に病棟看護師から電話がかかってきた際の対応テンプレートを作成してください。
以下の5つの状況について、「確認すべき情報」「電話口での指示」「直接診察に行くべき基準」を整理してください。
1. 発熱(38.5度以上)の報告
2. 血圧低下(収縮期90mmHg以下)の報告
3. SpO2低下(90%以下)の報告
4. 不穏・せん妄の報告
5. 転倒の報告
各状況について以下の形式で:
【状況】
- 確認すべき情報(SBAR形式):
- S(状況): 何を聞くか
- B(背景): 何を聞くか
- A(評価): 何を確認するか
- R(提案/要望): 看護師に何を指示するか
- 電話口での指示:
- 直接診察に行くべき基準:
1-4. 準備のチェックリスト
当直前の準備として以下を確認しましょう:
- 頻出疾患のプロトコルをスマートフォンに保存した
- 薬剤用量早見表を印刷またはメモアプリに保存した
- 電話対応テンプレートを確認した
- 施設のコードブルー手順を再確認した
- 当直担当の上級医の連絡先を確認した
- AIツール(ChatGPT/Claudeなど)にログイン済みであることを確認した
フェーズ2: 当直中のリアルタイム活用
安全な活用の大前提
当直中にAIを使う際は、以下のルールを必ず守ってください。
絶対に守ること:
- 患者情報をそのまま入力しない -- 氏名、生年月日、ID番号などの個人情報は絶対に入力しない
- AIの出力を鵜呑みにしない -- 必ず自分の知識やガイドラインと照合する
- 緊急時はAIを使わない -- 心停止、ショックなど超緊急時はBLS/ACLSに従い、AIを開く時間はない
- 判断に迷ったら上級医に連絡する -- AIに聞く前に、上級医への相談を優先する
2-1. 鑑別診断の支援
当直中に「この症状の鑑別は何だろう」と迷った時、AIを思考の整理ツールとして活用できます。
プロンプト4: 鑑別診断の網羅と優先順位付け
あなたは救急医学の専門医です。以下の症例情報から、考えるべき鑑別診断を優先順位順にリストアップし、それぞれについて「見逃してはいけない疾患」「よくある疾患」「まれだが考慮すべき疾患」に分類してください。
【症例情報(匿名化済み)】
- 年齢層: 70代
- 性別: 男性
- 主訴: 突然発症の胸痛
- バイタル: 血圧 90/60mmHg、脈拍 110/min、SpO2 94%(room air)、体温 36.8度
- 現病歴: 2時間前から突然の胸痛が出現。冷汗あり。
- 既往歴: 高血圧、脂質異常症、糖尿病
【出力形式】
1. 見逃してはいけない疾患(Killer diseases): 疾患名 + 支持する所見 + 否定するために必要な検査
2. よくある疾患(Common diseases): 疾患名 + 支持する所見
3. まれだが考慮すべき疾患: 疾患名 + どんな時に疑うか
4. 推奨する初期検査のオーダー(優先順位順)
重要: 上記の「症例情報」部分は、必ず匿名化した情報のみを入力してください。年齢は「70代」のように年齢層で、具体的な年齢(72歳など)は避けましょう。
2-2. 検査値の解釈
異常値が出た時に「この数値は何を意味するのか」を素早く確認できます。
プロンプト5: 異常検査値の系統的解釈
あなたは臨床検査医学の専門家です。以下の検査値の異常について、臨床的意義を解説してください。
【異常検査値】
- BNP: 1500 pg/mL(基準値: 18.4以下)
- トロポニンT: 0.08 ng/mL(基準値: 0.014以下)
- D-dimer: 5.2 μg/mL(基準値: 1.0以下)
- 乳酸値: 4.5 mmol/L(基準値: 0.5-1.6)
【出力形式】
各検査値について:
1. この値が示す臨床的重症度(軽度/中等度/重度の異常)
2. 考えるべき主な原因疾患(3つまで)
3. 偽陽性・偽陰性となる状況
4. 追加で確認すべき検査
5. この値だけで緊急対応が必要かどうかの判断基準
2-3. 薬用量の確認
上記で事前に用量表を作成していますが、想定外の薬剤が必要になることもあります。
プロンプト6: 薬用量のクイック確認
あなたは臨床薬理学の専門家です。以下の条件で薬剤の適切な用量を教えてください。
【薬剤名】メロペネム(メロペン)
【適応】発熱性好中球減少症(FN)の経験的治療
【患者背景(匿名化済み)】
- 年齢層: 60代
- 体重: 約60kg
- 腎機能: eGFR 35 mL/min/1.73m2(CKD G3b)
【確認したいこと】
1. 推奨用量と投与間隔
2. 腎機能に応じた用量調整
3. 投与経路と投与時間
4. 主な副作用と注意点
5. 参照すべきガイドラインや添付文書の該当箇所
※ この情報は必ず添付文書やガイドラインで裏取りしてから使用します。
注意: AIが出力した用量は、必ず添付文書(PMDA)やUpToDateで確認してから使用してください。AIは用量を間違えることがあります。
2-4. 手技の手順確認
当直中に慣れない手技を行う前に、手順を復習する際に使えます。
プロンプト7: 手技手順のクイックレビュー
あなたは救急医学の指導医です。以下の手技の手順を、ステップバイステップで簡潔に教えてください。
【手技名】胸腔穿刺(胸腔ドレナージ)
【適応】緊張性気胸が疑われる症例
【出力形式】
1. 適応と禁忌の確認事項
2. 必要な物品リスト
3. 手技の手順(番号付きステップ)
4. 合併症と対処法
5. 手技後の確認事項
6. 上級医をコールすべきタイミング
※ 実際の施行前に、必ず上級医の立ち会いまたは許可を得てください。
2-5. 当直中のAI活用フローチャート
当直中にAIを使うかどうかの判断基準を以下に示します。
使ってよい場面:
- 鑑別診断の漏れがないか確認したい時
- 薬用量を確認したい時(必ず裏取りする前提)
- 検査値の解釈を整理したい時
- 手技の手順を復習したい時
- 病棟からの電話対応で知識の確認が必要な時
使ってはいけない場面:
- 心停止・ショックなどの超緊急時(まずBLS/ACLS)
- 患者の個人情報を含む入力が必要な場合
- 「AIがこう言ったから」という理由で治療方針を決定する場合
- 上級医に相談すべき判断をAIで代替しようとする場合
フェーズ3: 当直明けの振り返り
なぜ振り返りが重要か
当直は貴重な学習機会です。当直中に経験した症例を振り返り、知識を定着させることで、次の当直がより安心に、より確実になります。当直明けの疲れた状態でも、AIを活用すれば効率的に振り返りができます。
3-1. 症例の要約と学びの記録
プロンプト8: 当直症例の振り返りノート生成
あなたは研修医教育の専門家です。以下の当直中に経験した症例の概要から、学習効果の高い振り返りノートを作成してください。
【症例概要(匿名化済み)】
- 70代男性、突然発症の胸痛でER受診
- バイタル不安定(血圧低下、頻脈)
- 心電図でST上昇あり、トロポニン上昇
- 急性心筋梗塞(STEMI)と診断、循環器内科に緊急コンサルト
- 緊急カテーテル治療(PCI)施行
【私の対応】
- 12誘導心電図を迅速に施行した
- ヘパリン5000単位静注、アスピリン300mg内服を指示
- 循環器内科当直に電話連絡した
【出力形式】
1. 症例の学習ポイント(3つ)
2. 自分の対応の良かった点
3. 改善すべき点(次回に活かすこと)
4. この疾患に関する知識の整理(病態生理、診断基準、治療アルゴリズム)
5. 次回同様の症例に遭遇した時のアクションプラン
6. 関連する推奨文献・ガイドライン(1-2つ)
3-2. 知識の穴の特定と補強
当直中に「わからなかった」「自信がなかった」ことを記録し、AIで効率的に学習します。
当直中にメモしておいた疑問点(例: 「FNの抗菌薬の選択基準がわからなかった」「せん妄の薬物療法に迷った」)をまとめて入力します。
あなたは研修医教育の指導医です。以下は私が当直中に自信がなかったポイントです。それぞれについて、5分以内で読める簡潔な解説を作成してください。
【自信がなかったポイント】
1. 発熱性好中球減少症(FN)の定義と初期抗菌薬の選択基準
2. せん妄のマネジメント(薬物療法と非薬物療法)
3. 低ナトリウム血症の補正速度と浸透圧性脱髄症候群のリスク
【出力形式】
各トピックについて:
- 要点を箇条書き5-7項目で
- 覚えておくべき数値(用量、基準値など)
- よくある間違いとその対処
- 参照すべきガイドライン名
ケーススタディ: 実際にやってみた
ケース1: 深夜2時、70代男性の胸痛
状況
研修医1年目の田中先生(仮名)は内科当直中。深夜2時にERから呼ばれた。70代男性が突然の胸痛を訴えて救急搬送。冷汗あり、顔面蒼白。
AIの活用(当直前に準備していたプロトコルを参照)
田中先生は当直前に生成していた「急性冠症候群プロトコル」をスマートフォンで即座に確認。
- 初期評価: ABCDE アプローチでバイタル確認
- 12誘導心電図を5分以内に施行(プロトコル通り)
- 採血オーダー(トロポニン、BNP、D-dimer含む)
- ST上昇を確認し、循環器内科コンサルトの基準に該当すると判断
AIの活用(当直中)
心電図の所見で「aVRのST上昇って何だっけ」と一瞬迷った田中先生は、患者の対応が一段落した後(循環器内科が到着して引き継いだ後)、以下のようにAIに確認した。
心電図でaVR誘導にST上昇が見られる場合の臨床的意義を教えてください。
特に、急性冠症候群における意味と、他のST上昇パターンとの違いを説明してください。
AIの活用(当直明け)
翌朝、振り返りノート生成プロンプトを使って症例をまとめた。学びのポイントとして「aVRのST上昇は左冠動脈主幹部病変を示唆する重要な所見」という知識が得られた。
この経験からの教訓
- 事前にプロトコルを準備していたおかげで、慌てずに初期対応ができた
- AIは「対応が一段落してから」確認に使った(緊急対応中にスマホを見る余裕はない)
- 振り返りによって知識が定着した
ケース2: 病棟からの電話ラッシュ
状況
同じ田中先生の別の当直。22時から0時の間に病棟から5件の電話が立て続けに入った。
- 38.8度の発熱
- 不穏でベッド柵を乗り越えようとしている
- 点滴のルートが抜けた
- 血圧が85/50に低下
- 「眠れない」と患者が訴えている
AIの活用
電話対応テンプレートを事前に準備していたため、各電話に対してSBAR形式で情報を聴取し、対応の優先順位を素早く判断できた。
優先順位の判断:
- 血圧低下(緊急 -- 直接診察)
- 不穏(準緊急 -- 転倒リスク評価のため診察)
- 発熱(準緊急 -- 電話で追加情報確認後に判断)
- 点滴ルート抜去(看護師に再確保を依頼)
- 不眠(緊急性低 -- 他の対応後に対処)
この経験からの教訓
- 電話対応のテンプレートがあると、情報の聞き漏らしが減る
- 優先順位をつけることで、限られたリソースを最も必要な患者に振り分けられる
- 「AIに事前に聞いておく」ことの価値は、当直中ではなく当直前にある
よくある失敗と対策
失敗1: AIの薬用量をそのまま使ってしまった
事例: AIが「メロペネム1g 8時間ごと」と出力したが、患者の腎機能が低下していた(eGFR 25)。用量調整が必要だったが、AIの出力を確認せずにオーダーしてしまった。
対策:
- AIが出力した薬剤情報は、必ず添付文書(PMDA)で裏取りする
- 腎機能低下患者では、必ず「この患者のeGFRは〇〇」と追加情報を入力する
- 薬剤部に確認する習慣をつける
失敗2: 患者情報をそのままAIに入力してしまった
事例: 焦っていたため、カルテの記録をコピーしてそのままChatGPTに貼り付けた。患者の氏名と病院名が含まれていた。
対策:
- AIに入力する前に、必ず以下を削除する:
- 氏名(イニシャルも避ける)
- 生年月日(年齢層で代替: 70代、など)
- 病院名・施設名
- カルテID・患者番号
- 住所・電話番号
- テンプレートに「匿名化済み」と書く欄を設け、チェックする習慣をつける
失敗3: AIに「診断」を求めてしまった
事例: 「この患者の診断は何ですか」とAIに聞き、「急性虫垂炎の可能性が高い」と返ってきたため、それを根拠に手術をコンサルトした。実際には腸間膜リンパ節炎だった。
対策:
- AIに「診断」を求めるのではなく、「鑑別診断のリスト」を求める
- AIの出力は「自分の思考の漏れを確認するツール」として使う
- 最終的な診断は、身体所見・検査結果・臨床経過を総合して自分(と上級医)が行う
失敗4: 緊急時にAIを開いてしまった
事例: 心停止のコールがかかった時、CPRのアルゴリズムをAIに聞こうとしてスマートフォンを取り出した。
対策:
- 心停止などの超緊急事態では、AIを使っている時間はない
- BLS/ACLSのアルゴリズムは事前に暗記しておく
- 超緊急時の対応は、AIではなく事前のトレーニングと上級医のサポートに頼る
失敗5: 当直の振り返りをしなかった
事例: 当直明けは疲れてそのまま帰宅。経験した症例を振り返ることなく、同じ不安を次の当直でも繰り返した。
対策:
- 当直明けの15分だけ振り返りに使う
- 「わからなかった」「迷った」ことを当直中にメモしておく(スマートフォンのメモアプリに一言だけ)
- AIの振り返りプロンプトを使えば、15分で充実した学習ノートが作れる
AIに聞いてはいけないこと
当直中にAIを活用する際、以下のことは絶対に避けてください。
1. 患者の個人情報を含む質問
氏名、生年月日、ID番号など、患者を特定できる情報をAIに入力することは、個人情報保護法違反になりえます。
2. 「この患者を治療してください」という丸投げ
AIは治療を行う能力を持ちません。あくまで知識の確認や思考の整理に使います。
3. 法的判断を求める質問
「この対応で訴えられますか」「同意書なしで手技をしていいですか」などの法的判断は、AIではなく病院の医療安全部門や上級医に相談してください。
4. 施設固有のルールの確認
「当院の〇〇科のコンサルト手順は?」「当院の抗菌薬使用ガイドラインは?」など、施設固有の情報はAIにはわかりません。施設内のマニュアルを参照してください。
5. 感情的なサポートの代替
当直中のストレスや不安は大きいですが、AIにカウンセリングを求めるのではなく、同期や指導医、メンタルヘルスの専門家に相談してください。
AIツールの比較: 当直での使い分け
当直中の目的に応じて、適切なAIツールを選ぶことも重要です。
ChatGPT
- 強み: 汎用性が高い、会話の文脈を保持する
- 当直での用途: 鑑別診断の整理、薬用量確認、振り返りノート作成
- 注意: 医学的に不正確な情報を自信を持って出力することがある
Claude
- 強み: 長文の入力・出力に強い、指示に忠実
- 当直での用途: プロトコル生成、詳細な手技手順の確認、複雑な症例の整理
- 注意: リアルタイムの情報にアクセスできない
Perplexity
- 強み: Web検索と組み合わせた回答、情報源の引用あり
- 当直での用途: 最新のガイドラインの確認、特定の薬剤情報の検索
- 注意: 検索結果の質に依存する
UpToDate / DynaMed
- 強み: 医学的にレビューされた信頼性の高い情報
- 当直での用途: AIの出力の裏取り、エビデンスに基づいた治療方針の確認
- 注意: AIツールではないが、AIの出力を検証するための必須ツール
当直AIツールキットのカスタマイズ
このガイドで紹介したプロンプトは、あなたの診療科や施設に合わせてカスタマイズしてください。
カスタマイズのポイント
-
診療科に応じた疾患リスト: 内科系、外科系、小児科、産婦人科で頻出疾患は異なります。プロンプト1の疾患リストを自分の診療科に合わせて変更しましょう。
-
施設の採用薬に合わせた薬剤リスト: プロンプト2の薬剤リストを、自施設の採用薬に合わせて変更しましょう。
-
自分の弱点に合わせた事前準備: 過去の当直で苦手だった場面を重点的に準備しましょう。
-
チームメンバーとの共有: 同期の研修医とプロンプトやプロトコルを共有することで、チーム全体の当直対応力が向上します。
当直前チェックリスト(まとめ)
当直に出る前に、以下を確認しましょう。
準備物:
- 頻出疾患プロトコル(スマートフォンに保存)
- 薬剤用量早見表(印刷またはスマートフォン)
- 電話対応テンプレート
- BLS/ACLSアルゴリズムの復習
AIツール:
- ChatGPT/Claude/Perplexityにログイン済み
- このガイドのプロンプトをコピー可能な状態にしておく
マインドセット:
- AIは「補助」であり「代替」ではない
- 迷ったら上級医に相談する
- 患者情報の匿名化を必ず行う
まとめ
当直は、研修医にとって最も成長できる機会の一つです。AIを適切に活用することで、その学習効果を最大化しつつ、安全な診療を実践できます。
本ガイドの核心は以下の3点です。
1. 当直前(事前準備が最大の武器)
- 頻出疾患のプロトコル、薬用量早見表、電話対応テンプレートをAIで事前に生成し、手元に保存しておく。
2. 当直中(安全第一の補助ツール)
- AIは鑑別診断の整理や知識の確認に使う。患者情報の匿名化を徹底し、AIの出力は必ず裏取りする。緊急時はAIではなくBLS/ACLSとチームに頼る。
3. 当直明け(学びの最大化)
- 経験した症例をAIで振り返り、知識の穴を特定して補強する。15分の振り返りが、次の当直を大きく変える。
このガイドで紹介したプロンプトをカスタマイズし、繰り返し使うことで、あなただけの「当直AIツールキット」が完成します。
更新日: 2026年2月 対象読者: 研修医・若手医師 所要時間: 30分(通読)