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演習の作り方

  • レッスン 3
  • 14分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 良い演習の3つの条件を説明できる
  • 現実の仕事から演習の題材を選べる
  • 過程を評価対象にすることを、演習の説明時点で参加者に伝えられる

前のレッスンで作った、教える相手の説明書を使う場面がここで出てきます。演習は、その説明書に書いた対象・前提・制約・目標に沿って設計します。

AIの使い方を教える研修でよく見る演習に、「好きなお題でAIに何か作らせてください」というものがあります。自由度が高く、準備の手間も少ないので選ばれがちですが、実はあまりうまくいきません。お題が抽象的すぎて、参加者はAIとの会話をどこで区切ればいいか分からず、時間だけが過ぎていきます。

良い演習の3つの条件

現実に効果が出やすい演習には、共通する3つの条件があります。

良い演習の3つの条件

1

現実の仕事に近い

参加者が実際に抱えている仕事、または明日すぐ使える題材を選ぶ

2

やり直しの機会がある

1回出した答えで終わらせず、確認して直す工程を演習の中に含める

3

過程も評価すると先に伝える

成果物だけでなく、AIとのやり取りや考え方も見ると、演習の説明時点で伝える

3つ目は見落とされがちですが、実は演習の質を大きく左右します。過程も見ると分かっていれば、参加者は途中で工夫したことを言葉にして残そうとします。逆に、成果物だけが評価されると思っていれば、AIの出力をそのまま提出して終わりにしてしまいます。


現実の仕事に近い題材を選ぶ

抽象的なお題より、参加者の仕事に直結する題材のほうが、学んだことがそのまま翌日から使われます。教える相手の説明書に書いた「対象」と「前提」を見返し、その人たちが日常的に扱っている文書や作業から題材を選びます。

抽象的な題材と、仕事に近い題材

抽象的な題材

「好きな話題でAIにブログ記事を書かせてみましょう」。参加者は何を基準に良し悪しを判断すればいいか分からず、AIの出力を眺めて終わってしまう。

仕事に近い題材

「来月の部署会議の案内メールを、実際に送る想定でAIと一緒に作ってみましょう」。参加者は自分の基準(誰が読むか、何を伝えるべきか)で出力を評価できる。演習後、実際に使える下書きが手元に残る。

題材を選ぶときは、機密情報や個人情報を含む本物の文書をそのまま使わないよう注意が必要です。実際の仕事に近いが、架空の名前や数字に置き換えた題材を用意すると安全です。


やり直しの機会を演習の中に組み込む

1回のプロンプトで完成させる演習は、実際のAIとの協働から遠くなります。現実の仕事では、AIの出力を確認し、足りない部分を指摘し、直してもらう、という往復が普通です。この往復を、演習の手順そのものに組み込みます。

01

最初の依頼

説明書に沿って、題材をAIに頼む

02

確認

返ってきた答えを、自分の基準で確かめる

03

修正の依頼

足りない点を具体的に指摘し、直してもらう

やり直しを組み込んだ演習の流れ

演習時間の配分も、1回目の依頼だけで終わらないよう、確認と修正の時間を最初から確保しておきます。時間が足りず修正の工程を省くと、参加者は「一発で正解を出す使い方」を覚えてしまいます。


過程も評価すると、演習の説明時点で伝える

演習の最後に成果物だけを回収すると、参加者はAIの出力をそのまま貼り付けて終わりにしがちです。過程、つまりAIとどうやり取りしたか、どこで確認し、何を直したかも見ると、演習を始める前に伝えておくことで、参加者の取り組み方が変わります。

補足

伝え方の例

「今日の演習では、最終的にできたものだけでなく、AIとのやり取りの流れも見せてもらいます。途中でどこを直したか、なぜそう直したかが分かる形で残しておいてください」と、演習を始める前の1文で伝えるだけで十分です。

この1文があるかないかで、演習中の参加者の姿勢は大きく変わります。過程の評価をどう組み立てるかは、次のレッスンで詳しく扱います。


具体例:社内勉強会での演習

月1回開いている有志の社内勉強会で、「会議の議事録をAIに要約させる」という演習を設計する場面を考えてみます。

題材は、実際の議事録ではなく、よくある会議の展開を再現した架空の議事録を用意します(現実の仕事に近い)。参加者はまずAIに要約させ、抜け落ちている決定事項がないかを元の議事録と突き合わせ、抜けがあれば指摘して要約を直させます(やり直しの機会がある)。演習の説明では「最後に提出してもらうのは要約そのものより、どこを直したかのメモです」と最初に伝えます(過程も評価すると先に伝える)。

この3つを1つの演習に同時に組み込むと、参加者は「AIに一度頼んで終わり」ではなく、「確認して、直して、その過程を残す」という一連の流れを、1回の演習の中で体験できます。


やってみよう

演習1:今の演習を3条件で見直す

これまでに実施した、または実施を予定している演習を1つ選び、現実の仕事に近いか、やり直しの機会があるか、過程も評価すると伝えているか、の3条件それぞれについて、できている・できていないを書き出してみてください。

演習2:やり直しの工程を足す

演習1で「やり直しの機会がない」と判定した演習があれば、どこに確認と修正の工程を差し込めるかを考えてみてください。演習全体の時間配分も、確認と修正の分だけ調整が要ります。


今日のまとめ

3行で振り返ります。

  • 良い演習には、現実の仕事に近い、やり直しの機会がある、過程も評価すると先に伝えるという3つの条件がある
  • 抽象的なお題より、参加者の日常業務に近い題材のほうが、学んだことがそのまま翌日から使われる
  • 演習に確認と修正の工程を組み込み、過程も見ることを事前に伝えると、参加者の取り組み方が変わる

次のレッスンでは、成果物とやり取りの記録をどう評価するか、3つの見方を扱います。

セルフチェック

1. 良い演習の3つの条件として、本文が挙げていないものはどれですか。

2. 抽象的な題材の演習でよく起きる問題として、本文が説明しているものはどれですか。

3. 演習の説明時点で過程も評価すると伝えることの効果として、本文が述べているものはどれですか。

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