前回、オンボーディングガイド作りを4つの力で通しで運びました。最後の今回は、06回目で触れた透明性の倫理的責任を、実際に書ける形にします。開示文と、自分のAI利用方針の2つです。
開示文に入れる4つの要素
「AIが作成を支援しました」とだけ書く開示は、曖昧すぎて意味を持ちません。読んだ人は、どこからどこまでがAIの仕事で、どこからが自分の判断なのかを知りたいはずです。何を、どこまで、誰の判断で、という中身が要ります。
開示文の4要素
何にAIを使ったか
「文章の下書き作成」のように、具体的な作業名で書く。「AI活用」のような曖昧な言葉にしない
何を自分で確認したか
業務フロー表との突き合わせ、担当者への事実確認など、検証の範囲を書く
何を自分の判断で変更したか
専門知識をどこに適用したかが、最もはっきり表れる部分
誰が責任を負うか
この成果物を最終的に自分が支持すると明言する
オンボーディングガイドであれば、次のような開示文になります。
経理部向けオンボーディングガイドの構成案と下書き作成に、AIを使いました。既存の業務フロー表と実際の運用を照らし合わせて内容を確認し、フロー表に載っていなかった経費精算の締切ルールは、自分で確認のうえ書き足しています。掲載している手順の正確さについては、作成者である私が責任を持ちます。
この例では、「AIが構成案と下書きを作った」という具体的な作業名、「フロー表と実際の運用を照らした」という確認の範囲、「載っていなかった締切ルールは自分で書き足した」という自分の判断の跡、「作成者である私が責任を持つ」という最後の一文が、4要素にそれぞれ対応しています。自分の題材に置き換えるときは、この骨格をそのまま使えます。
〔オンボーディングガイド〕の下書き作成にAIを使いました。
業務フロー表と実際の運用を照らし合わせて事実を確認し、〔配属先の部署〕特有の手順は自分で書き足しています。
最終的な内容の正確さについては、〔自分の名前〕が責任を持ちます。注意
声明そのものも、事実として確かめる
開示文に「業務フロー表と照らし合わせて確認した」と書くなら、それが本当に済んでいる必要があります。開示文自体も、成果物についての1つの主張です。書いた内容が本当に済んでいるかを、公開する前にもう一度自分で確かめてください。
個人のAI利用方針を1枚で書く
仕事のたびに開示文を一から考えるのは負担です。先に、自分がAIをどう使うかの方針を1枚にまとめておくと、毎回の判断が速くなります。
個人のAI利用方針に入れる4つのこと
使う場面
下書き作成、要約、壁打ちなど、AIに任せると決めている仕事の種類
使わない場面
最終判断そのもの、機密性の高い相談など、自分だけで完結させると決めている仕事の種類
明かし方
AIを使ったことを、誰に、どんな形で伝えるかの基本ルール
最終確認の仕方
公開・提出の前に、何を、誰に確認してもらうかの手順
自分の仕事でのAI利用方針を、次の4項目で1枚にまとめたいです。
一緒に整理してください。
1. 使う場面: 〔思いつく範囲で書く。分からなければ空欄でよい〕
2. 使わない場面: 〔同上〕
3. 明かし方: 〔同上〕
4. 最終確認の仕方: 〔同上〕
まず私が書いた内容を土台に、抜けていそうな観点があれば質問してください。オンボーディングガイドの経験をもとに書くと、たとえば次のような記入例になります。
使う場面:資料や手順書の構成案づくり、下書きの作成、読みやすさの調整。使わない場面:人事評価や配属など、判断そのものに関わる文章。明かし方:配属先の上司には作業内容と確認範囲まで伝え、資料を読むだけの相手には「定期的に見直している」とだけ伝える。最終確認の仕方:公開前に、その業務を実際に担当している人に一度読んでもらい、事実の誤りがないかを確認してもらう。
4項目のうち、いちばん書きやすいのは「使う場面」で、いちばん後回しになりやすいのは「使わない場面」です。**使わない場面を先に決めておくほうが、あとで迷わずに済みます。**一度作った方針は、仕事のたびに見直して育てていくものです。最初から完璧である必要はありません。
やってみよう
演習1:オンボーディングガイドの開示文を書く
上の4要素を使って、オンボーディングガイド(または自分の題材)の開示文を1つ書いてください。1〜3文程度で構いません。
演習2:自分のAI利用方針の下書きを作る
上のテンプレートを使い、4項目のうち埋められるものだけでよいので、自分のAI利用方針の下書きを作ってください。空欄が多くても構いません。埋まっていない項目は、次に似た仕事をするときに1つずつ足していきます。
今日のまとめ
3行で振り返ります。
- 開示文には、何に使ったか・何を確認したか・何を自分で変更したか・誰が責任を負うかの4つを入れる
- 開示文自体も1つの主張であり、公開する前にその内容が本当かを確かめる
- 個人のAI利用方針を1枚持っておくと、毎回の開示判断が速くなる
このコースでは、委任力・記述力・評価力・倫理的責任という4つの力を、オンボーディングガイド作りという1つの題材を通して練習しました。委任力で任せる範囲を決め、記述力で伝え、評価力で確かめ、倫理的責任で引き受ける。この順番自体は仕事のたびに変わりますが、4つの問いそのものは変わりません。
次に別の仕事でAIを使うときも、同じ4つの問いに戻ってきてください。何を任せ、何を伝え、何を確かめ、どう責任を持つか。この4つは、資料づくりに限らず、扱う仕事が変わっても同じ形で使えます。
セルフチェック
1. 本文で紹介した、開示文に入れる4要素の組み合わせとして正しいものはどれですか。
2. 「声明そのものも、事実として確かめる」という本文の注意点が指しているのはどれですか。
3. 個人のAI利用方針を先に1枚まとめておく利点として、本文が説明しているのはどれですか。