同じ説明を、Claudeに頼むたびに書き直す。多くの人が、この作業を毎回繰り返しています。
たとえば社内向けの週次報告。書式もトーンもだいたい決まっているのに、Claudeに頼むたびに「うちの部門は◯◯で、報告の順番は結論・数字・次のアクション」と説明し直す。参考にしたい過去の報告書も、そのつど探して貼り直す。
社内FAQの回答や、連載記事の下書きでも同じことが起きる。前提を説明する手間のほうが、本題より長くなることさえある。
この繰り返しを1回で終わらせる仕組みがプロジェクトです。
プロジェクトとは
プロジェクトは、指示と資料をひとまとめにした専用の作業場です。公式サポートの説明では、独自のチャット履歴と知識ベースを持つ、自己完結した作業スペースとされています。
普通の会話は、そのチャットの中でしか文脈を覚えません。プロジェクトの中で始めた会話は、そのプロジェクトに置いた指示と資料をすべて踏まえたうえで答えます。
「自己完結」という言葉には、チャット履歴も含まれます。あるプロジェクトの中で開いた会話一覧は、そのプロジェクトの中だけに並びます。普通の会話の履歴や、別のプロジェクトの会話とは分けて管理されるので、あとから見返すときに迷いません。
プロジェクトは無料アカウントでも使えます。作成できる数は5個までです。有料プラン(Pro・Max・Team・Enterprise)になると、資料の容量がRAG(検索拡張生成)という技術で自動的に広がり、最大10倍まで詰め込めるようになります。プラン間の違いは容量であって、使えるかどうかではありません。「プロジェクトは有料プラン限定」という思い込みは、この時点で外しておいてください。
作ってみる
作り方は、指示を書く工程と資料を置く工程に分かれます。指示は「毎回どう振る舞ってほしいか」というルール、資料は「参照してほしい中身」です。この2つを最初に分けて考えると、あとで直すときにどちらを直せばいいか迷いません。
プロジェクトの作り方
新規プロジェクト
新規作成のボタンから名前と説明を付ける
指示を書く
指示の入力欄に型とルールを書いて保存する
資料を置く
文書・テキスト・コードを知識ベースに追加する
話しかける
プロジェクトの中で新しいチャットを開いて頼む
指示に書くのは、フォーマットと禁止事項の2つで十分です。「結論・根拠・出典の順で書く」「出典のない数字は書かない」のように。資料には、いつも参照する過去の報告書やテンプレート、社内文書を置きます。
一度この2つを済ませれば、次からは同じプロジェクトで話しかけるだけです。書き直すのは、その回だけの追加情報だけになります。
プロジェクトは、1つの用途に絞って小さく作るほど扱いやすくなります。「週次報告」と「社内FAQ」を1つのプロジェクトにまとめると、指示が入り混じって答えの質が落ちます。用途ごとに箱を分けたほうが、あとから資料を足すときも迷いません。
メモリとの違い
Claudeには、プロジェクトとは別に「メモリ」という機能もあります。過去の会話を個別のトピックとして自動で覚えておき、後の会話で参照する仕組みです。両者は役割が違います。
プロジェクトの知識 と 会話のメモリ
自分が意図して置いた資料と指示。そのプロジェクトの中だけで効く。他のプロジェクトや通常の会話には漏れない。
チャット中に自動で保存される個別トピック。既定のオン・オフはプランで違う。Free・Pro・Maxは既定オン、Team・Enterpriseは既定オフで、管理者が組織単位で有効化する。
さらに、各プロジェクトは独立したメモリ空間を持ちます。あるプロジェクトで話した内容が、別のプロジェクトや通常の会話に混ざることはありません。資料は自分で置いた知識、メモリは会話から自動で溜まる記憶と考えると整理しやすくなります。
この分かれ方には理由があります。メモリは便利ですが、何を覚えているかが会話の外からは見えにくく、思い出す範囲もこちらで完全には制御できません。一方プロジェクトの指示と資料は、自分が書いた分だけがそこにあります。毎回同じ答えを引き出したい仕事は、メモリ任せにせず指示と資料に書いておくほうが安定します。
チームで共有する
Team・Enterpriseプランでは、プロジェクトをチームで共有できます。共有機能はこの2プランだけの機能で、個人向けのPro・Maxプランにはありません。
プロジェクト名の横にある共有ボタンから、メールアドレスで個別に招待するか、リストをまとめて貼り付けます。権限は2段階です。「閲覧のみ」は資料と指示を見てチャットできますが、書き換えはできません。「編集可」は指示や資料を書き換え、メンバー設定も更新できます。
公開範囲も選べます。「非公開(招待した人だけ)」か「組織全体に公開(管理者が許可した範囲の全員)」を、作成時か後からいつでも切り替えられます。定例の報告や社内FAQのように、部門で使い回すプロジェクトほどこの設定が効いてきます。
権限の使い分けは難しくありません。資料を読んで質問したいだけのメンバーには「閲覧のみ」で十分です。指示や資料を育てていく担当者には「編集可」を渡します。誰かが資料や指示を更新すれば、そのプロジェクトを使う全員が同じ内容を見ることになります。各自がバラバラの資料を貼り付けていた状態から、1つの正しい資料を全員で参照する状態に変わります。
どんな仕事で効くか
型が決まっていて、繰り返す仕事ほどプロジェクトに向いています。見分け方は単純です。「次にやるときも、たぶん同じ説明をするはず」と思ったら、その仕事はプロジェクト化の候補です。
書式と数字の出典ルールを指示に、過去の報告書を資料に置く
規程や手順書を資料に置き、聞かれた質問にその場で答えさせる
文体・構成のルールと過去原稿を資料に置き、下書きの質を揃える
反対に、毎回テーマも形式も変わる一度きりの相談は、普通の会話で十分です。旅行の計画や、一度だけの調べ物のためにプロジェクトを作る必要はありません。プロジェクト化する価値があるのは、同じ型を繰り返す仕事だけです。
今日のまとめ
3行で振り返ります。
- プロジェクトは指示と資料をひとまとめにした作業場で、無料アカウントでも使える
- 会話のメモリとは別に、プロジェクトごとに独立した知識と権限を持つ
- 繰り返す仕事だけをプロジェクト化する。一度きりの相談は普通の会話でいい
次のレッスンでは、アーティファクトを使って、会話の中から文書やツールをその場で作る方法を見ていきます。
セルフチェック
1. 無料アカウントでのプロジェクトについて、正しいのはどれ?
2. プロジェクトの知識と、通常の会話のメモリの違いとして正しいのはどれ?
3. プロジェクトをチームで共有できるプランと、その権限として正しいのはどれ?