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文脈と「自分が誰か」を足す

  • レッスン 2
  • 13分

このレッスンで

終わる頃には、次ができるようになります

  • 曖昧な依頼を3段階で育てる型を使える
  • 「なぜ聞くのか」「自分は誰でどこまで知っているか」を足す効果を説明できる
  • 自分の仕事の依頼を、同じ型で書き直せる

前のレッスンで、頼み方は記述力の実践だと見ました。ここからは、具体的な技法の1つ目、文脈の足し方を扱います。

同じ依頼でも、文脈をどれだけ足すかで、返ってくる答えの深さは大きく変わります。3段階に分けて育てていくと、どこで何を足せばいいかが見えやすくなります。


3段階で依頼を育てる

3段階の全体像

1

曖昧な依頼

範囲も形式も分からないまま投げる

2

範囲・形式を足す

対象データ・集計単位・出力形式を指定する

3

なぜ・自分が誰かを足す

目的と、自分の立場・知っている範囲を添える

例として、部内の月次売上集計を、来週の定例会議用にまとめる場面を使います。

前の頼み方(段階1:曖昧)
今月の売上データをまとめて。

これだけだと、範囲も形式も分かりません。データのどこからどこまでを見るのか、表にするのか文章にするのか、AIは推測するしかありません。

途中:範囲・形式を足す(段階2)
添付の売上データ(今月分、店舗別・商品カテゴリ別)を集計して。前月比と、上位3カテゴリを表にまとめて。

何を集計するかは伝わりましたが、まだ「何のために」が抜けています。

後の頼み方(段階3:なぜ聞くのか・自分が誰かを足す)
添付の売上データ(今月分、店舗別・商品カテゴリ別)を集計して。来週の定例会議で、店長10名に今月の傾向を3分で説明するための資料。前月比と上位3カテゴリを表にし、落ち込んだカテゴリがあれば理由の仮説も添えて。自分は本部の企画担当で、現場の細かい事情までは把握していない。

前の頼み方と後の頼み方を並べると、変わったのは分量だけではありません。範囲・読み手・自分の立場が加わったことで、AIは「何を集計するか」だけでなく「誰に、どう説明すればよいか」まで判断できるようになります。前の頼み方では、どんな粒度で表を作ればよいか、コメントを添えるべきかもAIの推測任せでしたが、後の頼み方では、店長会議でそのまま使える具体性を持った下書きが返ってきます。

3段階目で足した「自分が誰で、どこまで知っているか」が、意外と効きます。自分の立場を伝えると、AIは自分が埋めるべき前提と、こちらに確認すべき前提を区別できるようになります。


なぜ「自分が誰か」が効くのか

「自分は本部の企画担当で、現場の細かい事情までは把握していない」と伝えると、AIは「店長には分かるが企画担当には分からない情報」を補って説明しようとします。

逆にこの一文がないと、AIは書き手がどこまで知っているかを推測するしかなく、専門用語をそのまま使ってしまったり、反対に基本的な説明を省いてしまったりします。読み手の説明だけでなく、書き手自身の立場を添えることが、記述力の一部だと考えてください。

自分が誰かを伝えるといっても、書く内容には線引きが要ります。部署名や役割、知っている範囲といった立場の説明にとどめ、氏名や社内の個人的な事情まで書き込む必要はありません。伝えたいのは「どこまで補って説明すればよいか」の目安であって、身元そのものではないからです。

段階2で止めた場合、範囲や形式は伝わっているぶん一見それらしい表がすぐ返ってきます。ただしよく見ると、店長にとって当たり前の情報まで丁寧に説明していたり、逆に本部にしか分からない前提を無言で使っていたりすることがあります。段階3まで進めて初めて、読み手と書き手の両方に合わせた説明の厚みが調整されます。

3段階すべてを毎回書く必要はありません。急ぎの用件は段階1で十分なこともあります。込み入った相談ほど、段階を足す価値が上がると考えてください。

同じ3段階は、集計以外の仕事にもそのまま使えます。授業の教材を頼むときも、「小テストを作って」だけでなく、「中学2年の理科、光合成の単元、来週の小テスト用に10問」と範囲・形式を足し、「今年から教科書が変わり、生徒は新しい用語にまだ慣れていない」と自分の立場を足せば、同じ3段階で依頼が育ちます。

自分がどこまで知っているか、その場ではっきり言葉にできないこともあります。そのときは無理に断定せず、「詳しめに説明して、詳しすぎたら削るので教えて」と伝えておく手もあります。段階3を省いたまま進めるより、扱いに迷っていること自体を伝えたほうが、AIは説明の厚みを探りながら書いてくれます。


やってみよう

演習1:自分の依頼を3段階に分けて書く

最近AIに頼んだこと、またはこれから頼みたいことを1つ選び、段階1(曖昧)→段階2(範囲・形式を足す)→段階3(なぜ聞くのか・自分が誰か)の3段階で書いてみてください。

演習2:省いている前提を探す

段階3を書くとき、「自分は何を知っていて、何を知らないか」を1文で言えるか試してください。言葉にしにくい場合、それが普段省略しがちな前提です。


今日のまとめ

3行で振り返ります。

  • 依頼は曖昧→範囲や形式を足す→なぜ聞くのか・自分が誰かを足す、の3段階で育てられる
  • 3段階目の「自分が誰か」は、AIが補うべき前提とこちらに確認すべき前提を区別する手がかりになる
  • 込み入った相談ほど、段階を足す価値が上がる

次のレッスンでは、見本と出力の条件で、返ってくる答えの幅を絞り込む方法を見ていきます。

セルフチェック

1. 本文で紹介した3段階の依頼の育て方のうち、段階2で足すものはどれですか。

2. 「自分は本部の企画担当で、現場の細かい事情までは把握していない」という一文を足す効果として、本文が説明しているものはどれですか。

3. 本文が勧めている、3段階すべてを使うかどうかの目安として正しいものはどれですか。

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