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第3章:整体に通うな、筋トレに投資しろ

日本には整骨院が50,919か所ある[9]。コンビニの数より多い、という話は有名だ。整骨院は約2,450人に1軒で、この10年で26.1%増加している。鍼灸院は約37,780か所。あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師を合わせると、46万人以上が「体の不調を治す」仕事に従事している。これは、一つの巨大な産業である。同時に、一つの静かな敗北でもある。

日本人の自覚症状、男性1位・女性1位

厚生労働省の「国民生活基礎調査」によれば、日本人の自覚症状で男性1位は腰痛、女性1位は肩こりだ[8]。1000人あたり腰痛は約90人、肩こりは女性で約110人。日本人の約1割が、常に腰痛・肩こりを抱えている計算になる。

この不調に対処するため、月に2回、整体に通う。1回3,000円として、年間7万2千円。マッサージ60分5,000円を月2回で、年間12万円。整体+マッサージの合併で、年間15〜20万円を「痛みを一時的に消す」ために使っている人もいる。

労働人口6,000万人の10%(600万人)が月2回通うとすると、年間3,000億〜9,000億円が「体の不調を治す」ために消費されている計算だ[10]。

これは健康への投資ではない。不健康という慢性状態への月額課金だ。

対症療法の無限ループ

現状のサイクルはこうだ。

デスクワーク → 運動不足 → 肩こり・腰痛 → 整体・マッサージ → 一時的改善 → また不調 → 繰り返し

僕はこれを、対症療法の無限ループと呼んでいる。整体の技術が悪いわけじゃない。施術者たちは一生懸命やっている。でも、構造的に、根本原因に手が届かないのだ。

根本原因は何か。筋力低下である。

公益社団法人 生体制御学会の調査(1,436名の新患)では、主な訴えは「肩や首筋がこる」(76%)、「腰や背中が痛くなる」で、女性が約2倍、平均年齢は53.48歳だった[11]。これらの大半は、運動不足と筋力低下が根本原因だ。

筋肉がない身体には、どれだけマッサージをしても、次の月にはまた同じ場所が痛くなる。水をかいても穴だらけのバケツに水を注いでいるようなもので、出口のない作業になる。

そもそも、行かなくていい体にすれば?

理想のサイクルは違う。

運動習慣 → 筋力・柔軟性向上 → 姿勢改善 → 肩こり・腰痛が起きにくい → 整体不要 → 時間もお金も節約

つまり、「治す」のではなく「そもそも壊れない体を作る」。

投資対効果を比較してみよう。

選択肢年間コスト効果
整体・マッサージ月2回5〜15万円一時的、根本解決なし
ジム会費6〜12万円根本改善、全身の健康向上
自重トレーニング0円根本改善、ただし継続に意志が要る

同じお金を使うなら、「治す」より「強くする」に使ったほうが賢い。

「整体に価値がない」とは言っていない

ここで誤解されないように、一言付け加えておく。

整体や鍼灸には、固有の価値がある。運動では解決しない症状への対応、専門家による診断とアドバイス、施術を受けること自体の心理的安心感、運動を始める前の「下準備」としての調整。どれも大事だ。

対立ではなく、組み合わせを考えるべきだ。整体で体を整えてから運動を始める。運動で体を鍛えながら、定期的に整体でメンテナンスする。どちらか一方ではなく、両方を使い分けるのが賢い。

でも、あえて挑発的に言う。

整体に通う時間とお金があるなら、筋トレに投資しろ。

体のメンテナンスを「外注」するのか、「自分でできる体」を作るのか。その選択が、10年後のあなたを決める。

次の章では、15兆円の医療費を筋肉で削る、という話をする。

この章のポイント

  • 日本人の約1割が常に腰痛・肩こりを抱え、労働人口の10%が月2回通えば年間3,000〜9,000億円の支出
  • 整体は「不健康という慢性状態への月額課金」。対症療法の無限ループから抜けられない
  • 根本原因は筋力低下。筋肉のない身体は穴の開いたバケツと同じで、施術は流れ落ちる
  • 整体に通う時間とお金があるなら、筋トレに投資しろ。メンテナンスを外注するか、自分でできる体を作るか