この本の最後の章で、僕の個人的な野望を書いておきたい。僕は、日本に「ビジネスアスリート」を増やしたい。会社を作るより、もっと広いものを作りたい。ムーブメントを作る、という話だ。
ミッション。5年で1%
日本のビジネスアスリートを、5年で1%増やす。
「ビジネスアスリート」とは、働きながら、自らの身体に投資し続ける人のことだ。具体的には、以下の3条件を満たす人を指す。
- 就業している(会社員、経営者、フリーランス、形態は問わない)
- 週2回以上、計画的に運動している(1回30分以上、ややきつい強度)
- 自らの健康を主体的に管理している(運動だけでなく、睡眠・栄養にも意識を向けている)
①は、プロスポーツ選手ではなく、本業を持ちながら体を鍛える人、という意味だ。②は、スポーツ庁のアクティブ・スポーツ人口の基準に準拠している。測定可能な基準で、5年後に「1%増えたか」を検証できる。③は、マインドセットの部分で測定は難しいが、本当のビジネスアスリートは「自分の体を知る旅に出ている」人だと僕は考えている。
60万人という数字
日本の労働人口は約6,000万人。その1%は、60万人だ。
5年で60万人を動かす。年間12万人、月1万人、毎日300人以上。が「ビジネスアスリート」になる計算になる。
現状、日本のジム会員率は約3〜4%で、定期的に筋トレする労働者は推定14%程度。経営者に限れば約70%が筋トレをしているが、一般にはまだ広がっていない。
この1%を上乗せできれば、社会は確実に変わる。
なぜ1%なのか
1%は、現実的で、測定可能だから。そして社会的インパクトがあるから。
60万人が変われば、その組織・家族・地域に波及する。周囲に運動する人が1人いれば、その習慣は伝染する、という研究もある[21]。1%は「運動は難しい」という固定観念を変える閾値になりうる。
これは、精神論じゃない。数字で計算したマイルストーンだ。
波及メカニズム
60万人をどう動かすか。単純計算では届かない。でも、複合的に考えると、十分可能だ。
| チャネル | リーチ | 行動変容率 | 新ビジネスアスリート |
|---|---|---|---|
| この本 | 5万部(5年累計) | 10% | 5,000人 |
| note読者 | 10万人(5年累計) | 5% | 5,000人 |
| コア層500人の周囲への影響 | 500人×10人 | 50% | 2,500人 |
| 企業研修・セミナー | 100社×100人 | 10% | 1,000人 |
| メディア露出・SNS | 50万人 | 1% | 5,000人 |
| 直接的効果の合計 | 約2万人 |
直接的な効果は約2万人。残りの58万人はどこから来るのか?
社会的伝染による二次・三次効果だ。
Aral & Nicolaidesの研究[21]によれば、運動習慣は社会的に伝染する。1人の運動者が平均3人に影響を与えると仮定すると、二次効果で3万人、三次効果で2.7万人、四次効果以降で1.5万人。累計で約9万人だ。
さらに、社会全体のトレンド。健康経営の普及、フィットネスアプリの進化、企業の福利厚生としての運動支援。が味方をする。この本は「その流れを加速する触媒」として機能する。
2031年のビジョン
2031年の日本では、ビジネスパーソンの15%以上が定期的に運動している。
「朝活でジム」が当たり前の選択肢になっている。企業の健康経営が標準になっている。「時間がないから運動できない」ではなく「運動するから時間が生まれる」という発想が広まっている。
この本は、その第一歩だ。
会社を作るより、ムーブメントを作る
最後に、この章のタイトルの話をする。
会社を作れば、利益を生み、株主と従業員が潤う。それはそれで価値がある。スタートアップで10億円調達して成功したら、影響範囲は確かに大きい。
でも、ビジネスアスリートを増やすことは、もっと広い価値を生む。
60万人が健康になる。年間3,000〜4,200億円の医療費が浮く。その家族や同僚にも波及する。社会全体のエネルギーが上がる。そして。単純に「楽しい国」になる。
スタートアップの成功は、市場のシェアを奪うゼロサムゲームだ。でも、運動を広めるのはプラスサムゲームだ。誰も損しない。全員が得をする。そして60万人の行動が変わったら、その人たちが周囲にさらに影響を与える。指数関数的に広がる。
会社を作るより、ムーブメントを作る。
これが、この活動の背後にある考え方だ。
あなたに、一つだけお願いがある
この本を読み終えたあなたに、一つだけお願いがある。
この先の5年で、自分自身を「ビジネスアスリート」に変えてほしい。
週2回、30分でいい。自重でもいい。家でも、公園でも、ジムでもいい。ただ、動き始めてほしい。そしてそれを、続けてほしい。
あなた一人が動き始めたら、隣の同僚が気づく。家族が気づく。友人が気づく。「最近、元気そうだね」と言われるようになる。そして、そのうちの何人かが、同じように動き始める。
それが、社会的伝染だ。そして、あなたが、このムーブメントの起点になる。
60万人のうちの1人に、なってくれないか。
次は、エピローグで会おう。
この章のポイント
- ミッションは「日本のビジネスアスリートを5年で1%(60万人)増やす」。測定可能で社会的インパクトがある数字
- 直接効果は約2万人、残り58万人は社会的伝染による二次・三次効果で達成可能(Aral 2017)
- 運動を広めるのはゼロサムゲームではなくプラスサムゲーム。誰も損せず、指数関数的に広がる
- 会社を作るより、ムーブメントを作る。あなた一人の行動が、ムーブメントの起点になる