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第5章:AIに頭を奪われたら、身体で勝て

Bryan Johnson、Mark Zuckerberg、Jeff Bezos、Jack Dorsey、Sam Altman。この5人の共通点は何か。一つ目は。言うまでもなく。テック業界の頂点にいること。二つ目は、全員が自分の身体に狂気じみた投資をしていることだ。知的労働の頂点にいる人ほど、身体に投資している。これは偶然ではない。

テック業界の頂点がやっていること

Bryan Johnsonは年齢逆転を目指すバイオハッキング「Blueprint」を実践している[37]。Mark Zuckerbergはブラジリアン柔術にハマって、公式戦にも出ている[38]。Jeff Bezosは毎朝プールで泳ぎ、Jack Dorseyは朝から冷水浴と瞑想、Sam Altmanは週5回ウェイトを挙げる。

知的労働の頂点にいる人ほど、身体に投資している。これは偶然ではない。

なぜ、頭を使う人が身体を鍛えるのか

答えは、一見逆説的に聞こえる。

「頭を使う仕事」こそ、身体を動かすべきだからだ。

運動はBDNF(脳由来神経栄養因子)の分泌を促す[26]。BDNFは神経細胞の生存・成長・分化を助けるタンパク質で、脳の「肥料」と呼ばれる。これが分泌されると、認知機能、記憶力、創造性が向上する[35]。

Erickson KI らの2011年の研究では、有酸素運動で海馬が2%増加することが示された[36]。通常は年1〜2%縮小する場所が、運動によって逆に大きくなる。

つまり、知的労働者にとって、運動は娯楽でも健康法でもなく、業務のための基盤整備である。脳というハードウェアをメンテナンスしないで使い続ければ、必ずどこかで壊れる。

AI時代の逆説

AIが知的作業を代替する時代、「頭を使う」ことの相対的な価値は下がっていく。

ChatGPTが書類を書く。Claudeがコードを書く。Midjourneyが絵を描く。業務の多くが「AIに命令するだけの仕事」に置き換わっていく。

じゃあ、人間に残るのは何か。

身体を持っていること、それ自体だ。

AIは、疲れない。眠らない。空腹にならない。痛みを感じない。感動しない。恋をしない。汗をかかない。呼吸を乱さない。心臓を高鳴らせない。

これらは全部、弱点に見えて、人間であることの証明でもある。

皮肉なことに、テクノロジーが進むほど、原始的なものの価値が上がる。AI時代は「身体を使わなくても生きていける時代」だが、だからこそ「意図的に身体を使う」ことが贅沢になる。

原始への回帰

人類は何百万年も、身体を動かすことで生存してきた。脳も身体活動に最適化されている。座りっぱなしは、進化の想定外である。

ここで考えてほしい。生物学的に見れば、頭だけ動かしているのは異常事態だ。そもそも動物なんだから。頭だけ動かしているのが最適なわけがない。

現代人は「脳を使う生き物」だと思い込んでいる。でも生物学的には「動く生き物」(動物)だ。頭脳労働が高尚で肉体労働が低俗、という価値観自体が歪んでいる。

この歪みを、運動が修正する。

運動が「三本柱の起点」になる理由

健康の三本柱は運動・睡眠・栄養だ。しかし実際は、運動がすべての起点になる。

運動を始めると、よく眠れるようになる[39]。よく眠れると、よく食べるようになる[40]。よく食べると、もっと動ける。このサイクルが回り始める。

逆に、運動しない人は、睡眠の質が悪く、食事が乱れやすい。睡眠のために薬を飲み、食事のためにサプリを買う。でも、まず運動すればいい。医療の現場で見てきた結論がこれだ。

運動は「三本柱の一つ」ではない。三本柱を回すトリガーだ。

自分の体の「解像度」

最後にもう一つ、知的労働者に大事な話をする。

あなたは、自分の体のことをどれくらい知っているか。

「早く走れる/走れない」「これ食べれる/食べれない」程度の解像度で終わっていないか。食事も「好き嫌い」で選んでいないか。気分で決めていないか。それは、自分の体に本当に合っているのか。

筋トレは「自分の体を知る」プロセスでもある。どこが弱いか。どこが硬いか。何を食べたらパフォーマンスが上がるか。いつ寝ればベストコンディションになるか。

自分の体との対話を通じて、解像度が上がっていく。この解像度が、あなたの知的パフォーマンスの天井を決める。

結論。生き残り戦略

AIに頭を奪われたら、身体で勝て。

これはレトリックではない。生き残り戦略である。テック業界の頂点にいる人たちが、すでにこの答えを出している。あなたより圧倒的に忙しい彼らが、朝4時に起きてジムに行っている理由を、もう一度考えてほしい。

次の章から、第二部。鍛える者の哲学。に入る。最初に、バーベルは批判しない、という話をする。

この章のポイント

  • Johnson・Zuckerberg・Bezos・Dorsey・Altman。テック業界の頂点ほど身体に狂気じみて投資している
  • 運動はBDNFを分泌し、海馬を2%増やす。知的労働者にとっては業務のための基盤整備
  • AIが知的作業を代替する時代、人間に残るのは身体を持っていること、それ自体
  • 運動・睡眠・栄養の三本柱の起点は運動。三本柱の一つではなく、三本柱を回すトリガー
  • 自分の体の解像度が、知的パフォーマンスの天井を決める