ホテルに泊まると、朝6時台にジムへ行っても、既に人がいる。しかもスーツを着るような人が、出勤前に汗だくでトレーニングしている。ニューヨークのホテルでも、ロサンゼルスのホテルでも、シンガポールのホテルでも、同じ風景だ。でも。日本のビジネスホテルの朝のジムは、たいてい、無人である。
アメリカのフィットネス文化
アメリカのジムでは、朝7時台が最も混雑する[23]。日本とは真逆だ。
ホテル宿泊者のジム利用率は約25%で、4人に1人が滞在中にホテルのジムを利用する[24]。ビジネス旅行者ならさらに高い。
なぜ、彼らは朝から動くのか。
理由その1:ミラクルモーニング文化
朝4〜5時に起床し、運動・瞑想・読書を行う習慣が、2024〜2025年にかけてアメリカで大流行した[25]。
「極限ミラクルモーニング」として朝4時起床が一種のステータスになり、CEOやテックエリートがSNSで発信している。
朝のジム = 成功者の儀式、という記号が、英語圏では完全に確立されている。
理由その2:仕事のパフォーマンスのため
朝の運動が、仕事のパフォーマンスを上げる。
血行が促進されて脳への酸素供給が増加する。BDNFの分泌で認知機能が向上する[26]。1日を通じてエネルギーが増加する。コルチゾール調整効果でストレス耐性が高まる。
彼らは「健康のため」ではなく「仕事のパフォーマンスを上げるため」に朝から動いている。
理由その3:富裕層・成功者の共通習慣
Business Insiderの調査によれば、富裕層の起床時間は6時前が多数派で、朝のルーティンにワークアウトを含む率が高い[27]。ビジネスエリートは「起床してすぐ懸垂」→シャワー→出勤、という習慣を持つ。
収入が高い人ほど、朝の運動習慣を持っている。これは偶然ではない。
理由その4:時差ボケ対策
長距離移動で体内時計が乱れる。朝の運動は、体内リズムのリセットに効果的だ。ビジネス旅行者にとって「パフォーマンス維持」の必須ツールになっている。
日本との決定的な違い
フィットネス参加率を国際比較すると、こうなる[28]。
| 国 | フィットネス参加率 |
|---|---|
| スウェーデン | 約20% |
| アメリカ | 約20% |
| イギリス | 約15% |
| ドイツ | 約12% |
| 日本 | 約3〜4% |
日本は、欧米の1/5〜1/7である。
なぜこうなったのか。
長時間労働で、運動する時間がない。通勤時間が往復2時間かかる。「運動 = 若者のもの」という認識で、中高年が敬遠する。会員制ジムは入会金・年会費が高い。学校体育のトラウマで、運動が「楽しくない」という記憶になっている。
全部、構造の問題だ。
二つの循環
海外のビジネスパーソンの思考は、こういう形をしている。
朝の運動 → 脳が活性化 → 仕事のパフォーマンス↑ → 成果が出る → 収入↑ → 時間も買える → また運動に投資
これが、正の循環だ。
一方、日本の多くのビジネスパーソンの思考は、こうだ。
仕事が忙しい → 運動する時間がない → 体調悪化 → パフォーマンス↓ → 残業増 → さらに時間がない
これは、負の循環だ。
同じ1日24時間、同じ週5日勤務、同じ人間。違いは、最初の30分をどう使うか、それだけである。
「時間がないから運動しない」は逆
海外のビジネスパーソンが朝からジムにいるのは、彼らが「意識が高い」からじゃない。
それが最も合理的だと知っているからだ。
朝30分の投資で、1日のパフォーマンスが上がる。判断力、集中力、エネルギー、メンタル、全部が底上げされる。結果として、同じ仕事を短時間で終わらせられる。結果として、時間が生まれる。
「時間がないから運動しない」のではない。「運動するから時間を生み出せる」。これが、海外ビジネスパーソンの発想だ。
日本人も、この発想の転換が必要だ。
結論。明日の朝5時に起きて、ジムへ
朝のジムに、未来がある。
ホテルのジムに日本人がいない、というのは、国家レベルの恥ずかしい話だ。でもその恥は、いまこの本を読んでいるあなたが、明日の朝5時に起きて、近くのジムに行くだけで、少し晴れる。
次の章は、最終章。会社を作るより、ムーブメントを作れ、という話をする。
この章のポイント
- 朝のホテルジムに日本人はいない。英語圏では「朝のジム=成功者の儀式」という記号が確立している
- 海外ビジネスパーソンは「健康のため」ではなく「仕事のパフォーマンスのため」に朝から動いている
- 日本のフィットネス参加率は3〜4%で欧米の1/5〜1/7。構造的な問題の積み重ね
- 正の循環と負の循環の違いは「最初の30分をどう使うか」だけ
- 「時間がないから運動しない」ではなく「運動するから時間を生み出せる」