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複利

バフェットの複利、Navalの複利的リターン、クリアの1%改善。AIが試行コストをゼロに近づけたことで、複利の加速が始まった。

複利

ウォーレン・バフェットの資産の99%以上は、50歳以降に築かれた。

これは誇張ではない。事実だ。バフェットは11歳で最初の株を買い、30歳で100万ドルを持っていた。しかし今の資産の大部分は、50代以降の複利の結果だ。

My wealth has come from a combination of living in America, some lucky genes, and compound interest.

(ウォーレン・バフェット)

アメリカに住んでいたこと、幸運な遺伝子、そして複利。バフェットが自分の成功要因として挙げたのは、この三つだ。能力でも努力でもなく、複利。

複利の本質は、リターンがリターンを生む構造にある。100万円に年利10%がつけば110万円。翌年は110万円に10%がつくから121万円。元本が増えるから、同じ利率でも絶対額が増える。時間が経つほど加速する。

Naval Ravikantはこの原理を人生全体に拡張した。

All returns in life come from compound interest.

(Naval Ravikant)

人生のすべてのリターンは複利から来る。金融だけでなく、知識も、人間関係も、スキルも、評判も、すべて複利構造で蓄積される。

ジェームズ・クリアは『Atomic Habits』(2018年)でこう表現した。

Habits are the compound interest of self-improvement.

(ジェームズ・クリア『Atomic Habits』2018年)

習慣は自己改善の複利だ。1日1%改善すれば、1年後には37倍になる。1日1%悪化すれば、1年後にはほぼゼロになる。

1%の改善は、その日のうちには気づかない。1週間でも気づかない。1ヶ月でも、たぶん気づかない。しかし1年後には37倍だ。

ポール・グレアムが指摘したように、指数関数的な成長は最初フラットに見える。直線と区別がつかない。だから多くの人は途中でやめてしまう。「効果がない」と判断して。しかし実際には、複利のカーブは後半に爆発する。

AIはこの複利の構造を加速する。

まず、試行のコストが下がる。柳井正は「一勝九敗」と言った。成功する確率は10分の1。しかし10回試行すれば1回は当たる。重要なのは試行の回数だ。

AIが試行コストをゼロに近づけた。記事を1本書くのに3日かかっていたのが、半日で書ける。アイデアを試作するのに1週間かかっていたのが、1時間で形にできる。9回の失敗のコストが劇的に下がった。

失敗のコストが下がれば、試行の回数が増える。試行の回数が増えれば、成功の確率が上がる。成功が増えれば、複利の元本が増える。元本が増えれば、複利の効果が加速する。

次に、学習の速度が上がる。AIにフィードバックを求めれば、自分の盲点に早く気づける。文章のクセ、論理の飛躍、根拠の弱さ。人間のメンターに聞けば1週間待つことが、AIなら10秒で返ってくる。

学習のサイクルが短くなれば、1日の1%改善が実現しやすくなる。クリアの言う複利の回転速度が上がる。

しかし、注意が必要だ。複利は時間を要する。バフェットが99%の資産を50歳以降に築いたように、複利の恩恵は持続した者にしか訪れない。

AIは瞬発力を増幅する。しかし持続力は増幅できない。1年間毎日1%改善し続ける覚悟は、AIでは代替できない。AIが加速してくれるのは1回1回のサイクルであって、サイクルを回し続ける意志ではない。

複利の原理を知っている人は多い。しかし、それを実践し続ける人は少ない。なぜなら、最初のフラットな期間を耐えられないからだ。AIはフラットな期間を短くしてくれるかもしれない。しかしゼロにはしない。

増幅器は複利の回転を速くする。しかし複利の元本、つまりあなたが積み上げてきたものの質は、あなた自身にしか決められない。